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by thistimelastyear
テヘ顔
あかん寒すぎる。手と足が氷。寒いで思い出したことがある。
 たぶん冬やった。大学の時に,清水寺近くの漬け物屋でバイトしてたときに,おっちゃんのお客さんが「ごめん,トイレかしてもらえませんか」とやってきたことがある。
 丁度その時は,他のお客さんに応対してる時だったので,「あちらです」と手で案内した。
 すると,おっちゃんは「わかりました」という表情でそちらの方へ。しかし,同じ「あちら」の方向には,漬け物を入れておく大きな冷蔵庫があったのだ。それも高さ2メートルはゆうにあるだろう木の扉の冷蔵庫。ご丁寧に,草書体っぽい字で店の名前まで書いてある。(ちなみにトイレは,店を出て外の「あちら」にあったのだ)

 おっちゃんは言われた通り,冷蔵庫の扉の前に立ち,そびえ立つトイレの扉に手をかけ,引っ張った。
 しかし開かない。
 何のことはない,引き戸なのだ。
 おっちゃんはこわばった表情で,文字通りシリに火がついたように扉と悪戦苦闘。
 その一部始終を見ていた女店長。着物姿の店長。
 どこの輩が店の冷蔵庫を開けにきやがったんだとばかりに駆けつける。折しも,毎日漬け物の試食だけをしにくる,通称「ぱっつん」(前髪を一直線にぱっつんと切ってるから)というおっさんが出没していたため,同類かと思って慌てていたにちがいない。試食どころか,蔵を襲いに来やがったのかと。
ここからト書き風に書きます。
 ことの一部始終の裏側を知ってる僕,接客中につき離れられない。
 女店長とおっちゃん,にらみ合いを続ける。
 女店長「すいませんそこはお漬け物が入ってるんです」とおっちゃんに声をかける。
おっちゃんは急に扉を開けようとするのをやめ,2mを越える扉の前で「気をつけ」の姿勢になる。
(僕が推測するに,女店長の言葉はおっちゃんには「すいません今入ってるんです」に聞こえたのだろう。さすがにノックはしなかったが)

 -約5秒ほどの沈黙が入る-

 女店長は,なぜおっちゃんが扉の前から離れないのか,状況が読み込めない。相当ヤバイ奴ではないのかという表情を見せる。
 応対が終わった僕,二人のもとにかけつけて,
おっちゃんに,「トイレはあちらなんですよ」ともう一度指さす。

 最後,おっちゃんは『テヘ顔』でトイレへと走り去る。



たぶん「あちら」の方にはもう紛らわしい扉は無かったはずだ。
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by thistimelastyear | 2005-12-05 14:26 | こばなし
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